2.なぜ家庭内で事故は起きるのか

家庭内で起こる「ころぶ」、「つまる」、「おぼれる」について、それぞれ典型的な事故事例やその原因を見てみよう。

※タブを切り替えると、事例や原因の例をご覧いただけます。

ころぶ事例

つまずいてころぶ、ひっかかってころぶ、すべってころぶ、階段・段差から落ちる

発生場所をみると、居室で最も多く発生しています。具体的には、床に置いていた物や敷居につまずいてころぶ、敷物や電気コードに足がひっかかってころぶといった事故が起こっています。
また、表には入っていませんが、浴室や脱衣所ですべってころぶ場合もあります。

家庭内における場所別にみた高齢者の「ころぶ」による救急搬送者数(2016年)

  場所 搬送者数(人)
1 居室 14,524
2 階段 3,185
3 廊下 1,712
4 玄関 1,645
5 ベッド 1,333
6 椅子 1,030
7 トイレ 1,021

※東京消防庁管内における救急搬送が対象です。

※本コンテンツでは、出典における転倒・転落を「ころぶ」と表記しています。

出典:消費者庁『高齢者の事故の状況について-「人口動態調査」調査票情報及び「救急搬送データ」分析-』を基に損害保険料率算出機構作成

ころぶことが死亡につながるイメージはあまりないかもしれませんが、大きく分けて次の4つの事例があります。

  1. ころんで太ももの付け根等を骨折すること等により、
    急速に身体機能が悪化して、寝たきり・要介護になり、死亡につながる
  2. ころんで頭部・顔面を強打することにより、
    重い脳損傷(急性硬膜下血腫、脳挫傷等)をきたして死亡につながる
  3. ころんで骨折等の外傷を負うことにより、
    ころぶことを恐れて家に閉じこもりがちになる等活動が低下し、死亡につながる
  4. ころんだことをきっかけに、もともと抱えていた未病(発病には至っていないものの、軽い症状がある状態)が
    表面化したり、すでにかかっていた疾病が悪化したり、新たな合併症が生まれる等により、死亡につながる

(参考:武藤芳照、金子えり子「高齢者の転倒予防の基本理念と実践」、神経治療 Vol.33 No. 2、2016年)

なぜ起こる?

ころぶ原因の例

加齢による変化
  • 足の筋肉の衰え、バランス機能の衰え、受け身が取れない、同時に複数の動作ができない等の身体機能の変化
  • 集中力の低下、焦りやすくなる等の精神面の変化
  • 白内障、緑内障、起立性低血圧、関節リウマチ、パーキンソン病、認知症等の疾患
生活習慣
  • 運動不足
  • バランスを欠いた食事
  • 薬(睡眠薬、精神安定剤、抗うつ薬、降圧利尿薬、強心剤等)の副作用(ふらつき、立ちくらみ等が起きやすくなる)
  • 水分不足
生活環境
  • 階段、段差(敷居等)
  • つまずきやすい敷物(カーペットの端等)
  • 電気器具コード類
  • 滑りやすい床
  • 脱げやすい履き物(スリッパ、サンダル)
  • 照明の明るさ
その他
  • 一度ころぶと再度ころぶ可能性が高い
  • 一度ころぶと、ころぶことに恐れを抱くようになり、過度に外出を控える等活動が減り、身体機能の低下につながることもある(詳しくは、「転倒後症候群・生活不活発病に注意しよう」をご覧ください)

つまる事例

食べ物がつまる、異物がつまる・異物を誤飲する

食べ物は、「おかゆ類」、「餅」、「ご飯」等、主食類が多く、日常の食事で事故が発生しています。
なかでも、餅による事故は1月に多く発生しています。

食べ物別にみた高齢者の「つまる」による救急搬送者数(2016年)

食べ物 搬送者数(人)
おかゆ類 110
88
ご飯 79
76

※詳細不明のものは除きます。

※東京消防庁管内における救急搬送が対象です。

※本コンテンツでは、出典におけるつまる等を「つまる」と表記しています。

出典:消費者庁『高齢者の事故の状況について- 「人口動態調査」調査票情報及び「救急搬送データ」分析-』を基に損害保険料率算出機構作成

異物は、「包み・袋」、「薬剤」、「入れ歯」、「洗剤等」、日常生活でよく使用するものを誤飲することにより発生しています。

異物別にみた高齢者の「つまる」による救急搬送者数(2016年)

異物 搬送者数(人)
包み・袋 102
薬剤等によるもの 85
入れ歯によるもの 69
洗剤等 64

※詳細不明のものは除きます。

※東京消防庁管内における救急搬送が対象です。

※本コンテンツでは、出典におけるつまる等を「つまる」と表記しています。

出典:消費者庁『高齢者の事故の状況について- 「人口動態調査」調査票情報及び「救急搬送データ」分析-』を基に損害保険料率算出機構作成

なぜ起こる?

つまる原因の例

加齢による変化
(食べ物がつまる場合)
  • 歯の喪失
  • かむ力が弱い
  • 唾液の量が少ない
  • 飲み込む力が弱い
  • 咳等でつまりを押し返す力の衰え
(異物がつまる場合)
  • 視覚・味覚等の身体機能や判断機能の低下(含む認知症)
生活習慣
(食べ物がつまる場合)
  • 若い時と同じように硬い食べ物や大きな食べ物を食べている
  • 食べ物をかむ回数等が若い時と変わらない
  • 適度なとろみをつけていない(水分が多くさらさらしたものは気道に入りやすく、とろみを付けすぎると喉を通りにくくなり逆効果)
生活環境
(異物がつまる場合)
  • 食べ物と間違えやすいものを放置
  • 薬(錠剤やカプセル剤)の包装シートをハサミ等で1錠ずつ切り離して保管

おぼれる事例

浴槽内でおぼれる

おぼれる事故のほとんどが浴槽内で発生しています。
11~3月の寒い時期に多く発生しており、ヒートショックヒートショック:急激な温度の変化がもたらす身体への影響 閉じるやのぼせにより、意識を失ったり、めまいを起こしたことによる事故が多く発生しています。

65歳以上の月別救急搬送者数(2012年~2016年)

グラフ:65歳以上の月別救急搬送者数(2012年~2016年)

出典:東京消防庁『STOP!高齢者の入浴中の「おぼれ」』を基に損害保険料率算出機構作成

また、浴槽内ですべっておぼれる事故も発生しています。

浴槽内ですべっておぼれるイメージ

なぜ起こる?

おぼれる原因の例

加齢による変化
(ヒートショック・のぼせによりおぼれる場合)
  • 高齢者は血圧変化を起こしやすく、体温調節機能も低下しがち
(すべっておぼれる場合)
  • 足の筋肉の衰え
  • バランス機能の衰え
  • 受け身が取れない
生活習慣
(ヒートショック・のぼせによりおぼれる場合)
  • 高温、長時間入浴
  • 食後、飲酒後の入浴
生活環境
(ヒートショック・のぼせによりおぼれる場合)
  • 浴室、脱衣所と浴槽内の寒暖差
(すべっておぼれる場合)
  • 浴槽の底がすべりやすい
  • 浴槽内に手すり等がない

高齢者の家庭内事故の根本的な要因は「加齢による変化」で、加齢による変化に応じて生活習慣・生活環境を見直していないと事故発生につながるということね。

そうなんだ。高齢者は、加齢による変化、高齢者特有の疾患、服用している薬等の影響を受ける傾向にあるので、ちょっとした要因をきっかけとして家庭内事故に遭いやすいんだ。
さらに、下の表のように、「ころぶ」、「つまる」、「おぼれる」いずれの事故についても、高齢者は「入院以上の割合」が高くなっていて、死亡に至らなくともケガが重くなりやすいという特徴があるんだ。

主な事故の年代別救急搬送者数(2016年)

※表組は横スクロールしてご覧ください

  年齢 ころぶ つまる おぼれる
搬送者数(人) 入院以上の割合 搬送者数(人) 入院以上の割合 搬送者数(人) 入院以上の割合

55-59歳 3,642 26.3% 66 33.3% 7 100%
60-64歳 4,122 27.8% 90 38.9% 11 100%


65-69歳 6,774 30.4% 143 28.0% 34 100%
70-74歳 7,446 33.0% 175 50.3% 61 98.4%
75-79歳 10,142 36.1% 266 50.0% 111 99.1%
80-84歳 13,048 40.3% 385 51.4% 139 98.6%
85-89歳 11,848 45.6% 385 55.1% 129 100%
90歳- 9,093 50.3% 349 62.8% 61 100%
高齢者合計 58,351 40.1% 1,703 52.3% 535 99.3%
年齢 ころぶ つまる おぼれる
搬送者数(人) 入院以上の割合 搬送者数(人) 入院以上の割合 搬送者数(人) 入院以上の割合
(参考)55-59歳 3,642 26.3% 66 33.3% 7 100%
(参考)60-64歳 4,122 27.8% 90 38.9% 11 100%
65-69歳 6,774 30.4% 143 28.0% 34 100%
70-74歳 7,446 33.0% 175 50.3% 61 98.4%
75-79歳 10,142 36.1% 266 50.0% 111 99.1%
80-84歳 13,048 40.3% 385 51.4% 139 98.6%
85-89歳 11,848 45.6% 385 55.1% 129 100%
90歳- 9,093 50.3% 349 62.8% 61 100%
高齢者合計 58,351 40.1% 1703 52.3% 535 99.3%

※東京消防庁管内における救急搬送が対象です。

※本コンテンツでは、出典における転倒・転落を「ころぶ」、ものが詰まる等を「つまる」と表記しています。
また、中等症(生命の危険はないが入院を要するもの)、重症、死亡をここでは「入院以上」と表記しています。

出典:消費者庁『 高齢者の事故の状況について -「人口動態調査」調査票情報及び「救急搬送データ」分析-』を基に損害保険料率算出機構作成

救急搬送される事故は「ころぶ」事故が圧倒的に多いね。「ころぶ」事故は、転倒後症候群や生活不活発病につながる可能性もあるので注意が必要だよ。

転倒後症候群・生活不活発病に注意しよう

ため息をつくおじいさんため息をつくおばあさん一度ころんだ後に、ころぶことに恐れを抱くようになることを「転倒後症候群」と呼びます。 「転倒後症候群」になると、外出を控えたり、行動範囲を狭めたりすることで活動が減り、身体機能の低下(筋力の衰えや関節の動きが悪くなる等)やうつ状態を引き起こすこともあります。
このように、生活が不活発になることで、心身の機能が低下することを「生活不活発病」といいます。
生活不活発病は、病気やケガで⼊院するなどして⻑期間寝たきり状態になった場合も注意が必要です。
そして、生活不活発病になると、動きにくくなり、動かなくなるとさらに状態の悪化を招く、というように悪循環をつくって進行していくといわれています。

知らなかったわ。うちのおじいちゃん、おばあちゃんは大丈夫かしら。
離れて暮らす私に何かできることはないの?

大丈夫、いろいろとあるよ。 次のページでどのようなことができるか見ていこう。