私が担当しているのは、自賠責保険の基準料率の検証・算出です。保険会社から報告いただく膨大なデータを用いて、たとえば「事故の発生頻度が今後どう推移していくか」「事故1件あたりの保険金支払額はどのように変動するか」といった観点から現在の基準料率の水準が将来にわたって適正なものかどうかを検証し、見直しが必要な場合、新たな基準料率の算出を行います。会員会社はもちろんのこと、国土交通省や金融庁といった関連省庁とも連携しながら業務を進める必要があります。自賠責保険の保険料は日本中の人々に関わることなので社会的関心も大きく、基準料率水準の検証結果や改定については毎年ニュースに取り上げられます。
自賠責保険は、自動車を運行する場合、基本的に契約しなければならない強制保険です。契約件数は年間4,000万件以上にのぼります。そして現在、国内のすべての保険会社が、私たちの算出した基準料率を使用している状況です。このことを思い起こすたびに、仕事のダイナミズムを感じるとともに、その責任の大きさに身が引き締まります。私は検証・改定業務全般のほか、その取りまとめや組織内外に対する各種報告等に携わっていますが、膨大なデータの分析にあたっては保険数理に関する知識だけでなく、リスク環境の変化を察知するアンテナの高さ、視野の広さが求められます。また、関係省庁等との折衝においては、正解のない中での苦労もありますが、業務一つひとつが、この国に暮らす人々の「安心」の礎をつくっていると言っても過言ではありません。大きな使命感と、社会的意義を噛み締めながら、日々の仕事に取り組んでいます。
基準料率の算出・検証という業務には、幅広い視点と高度な専門性が必要です。先ほど説明した保険数理といった領域にとどまらず、法律や会計学等、その分野も多岐にわたります。難しそうな仕事に思えるかもしれませんが、機構には、人を育てる文化・価値観がしっかり根付いており、学生時代には保険数理を専攻していない先輩職員も数多く料率算出業務で活躍しています。高度な業務を通じて、社会全体に影響を与える仕事だからこそ、蓄積されたノウハウや専門性を継承していく文化が形成されています。少しでも興味があれば、ぜひ臆せずに志望いただけたらと思います。一緒にこの国の安心をつくる仕事に挑戦しましょう。