年頭所感

2021年1月
損害保険料率算出機構
理事長 浦川 道太郎

昨年は、世界全体が新型コロナウイルスに翻弄され感染防止に奮闘した1年でした。また、国内では、九州地方に大きな被害を及ぼした令和2年7月豪雨をはじめとした自然災害に見舞われ、各地の被害は甚大なものになりました。
これら感染症や自然災害により亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、罹患された皆さま、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

振り返りますと、昨年は、損害保険が重要な社会インフラの一つであり、日常の生活を取り戻すために不可欠な存在であることを改めて実感した年でもありました。各種の事故や災害は日々発生しており、新型コロナウイルス流行の中でも、被害者、被災者の皆さまに一日でも早く保険金を受け取っていただく損害保険の使命を疎かにすることはできません。
当機構も自賠責保険の損害調査という役割を担っておりますが、出社制限や行動制限の下でもこの役割を果たせるよう工夫し、業務をとめないよう取り組んでまいりました。本年も昨年以上に、コロナ禍での新たな生活様式や働き方に適応し、当機構に課された社会的使命を果たしていかなければならないと考えております。

本年は2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の発生から10年が経過する節目の年でもあり、自然災害の脅威に対する国民の皆さまの意識は改めて高まるものと思います。このため、自然災害に備える損害保険をサポートする当機構の役割は益々重くなりますが、社会情勢や自然環境の変化に素早く的確に対応し、正確なデータを提供することにより、安心できる安全な社会の確立に寄与すべく努力を継続してまいります。

当機構は、「損害保険業の健全な発達と保険契約者等の利益の保護」という社会的な使命を果たすため、「参考純率および基準料率の算出・提供」「自賠責保険(共済)の損害調査」「データバンク」の3つの業務を柱に取り組んでおります。

長期ビジョンである「損害保険料率算出機構 今後の10年ビジョン」(2013~2022年度)では、社会環境の変化に柔軟に対応し、「既存業務の基本的構造の見直しと新たな付加価値の創造によって、損害保険業の健全な発達を支え、広く社会から評価される存在を目指す」ことを掲げており、その集大成である第7次中期経営計画(2019~2022年度)は本年でその折り返しを迎えます。

当機構は、本年も第7次中期経営計画に掲げた次の取組みを着実に進めてまいります。

1.料率算出業務

料率算出業務では、自然災害の激甚化や車両技術の進展等、リスク環境・マーケット環境の変化を踏まえた料率検証・算出手法の改善と、リスク実態に見合った料率水準と保険料負担の公平性の向上に向けた取組みを進めます。

主な課題として、火災保険における近年の自然災害による損害出現傾向の料率水準への反映や水災の地域別リスク較差を反映する料率体系の検討、自動車保険におけるASV(先進安全自動車)技術のリスク分析などに取り組んでまいります。

さらに、中長期的な課題として、自動車保険では、コネクテッドカーや自動運転車の普及を想定し、参考純率における商品・料率制度体系上の対応領域やその内容の検討および情報発信の検討、火災保険では、近未来気候変動予測データを用いた気候変動による影響分析およびリスク評価反映手法の検討などにも取り組んでまいります。

2.損害調査業務

損害調査業務では、個々の案件を的確かつ迅速に対応し、引き続き、お客さまの満足度を高めていくことを目指します。そのため、基本品質の維持・向上、お客さま視点でのサービス向上、データを活用した不正請求防止策および医療費等の適正化策に取り組みます。

また、技術革新や環境変化への対応として、請求関係書類の電子データ化に向けた業務オペレーションの見直しやデジタル技術を活用したオンラインで外部の専門家の知見を得る仕組みの構築にも取り組んでまいります。

3.データバンク業務

データバンク業務では、社会全体の事故防止・損害軽減に寄与するため、昨年は、高齢運転者の事故分析や地震災害への備えをテーマとするレポートをウェブサイトに公表いたしました。今年も引き続き、当機構内外のデータを活用した情報発信を行ってまいります。

また、アジア諸国における損害保険市場の健全かつ安定的な成長に向け、データ収集や料率算出業務などに係る研修等を通じた技術協力を進めております。新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、昨年から国内外での活動が大幅に制限されておりますが、情勢を注視しながら引き続き取り組んでまいります。


本年も当機構はこれらの取組みを着実に積み上げ、社会的使命を果たし、ステークホルダーの期待に応えるべく、役職員一丸となって業務に専心してまいりますので、何卒ご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。

最後になりますが、皆さまにとって本年が実り多い年となることを祈念して、年頭のご挨拶といたします。


以 上

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