年頭所感

2023年1月
損害保険料率算出機構
理事長 早川 眞一郎


2023年の年頭に当たり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

2022年は、ロシアによるウクライナ侵攻という衝撃的な出来事で始まりました。世界の地政学的なリスクは一気に高まり、エネルギーや工業製品の供給にも悪影響を及ぼし、新型コロナ感染症の落ち着きにもかかわらず世界経済は停滞する状況になりました。

国内に目を向けると、新型コロナ感染症の第7波の流行期を経て行動制限が緩和され、交通量や海外渡航者の増加に見られるよう経済活動は徐々に再開しています。一方で、進行する円安やエネルギー・原料等の高騰による各種値上げラッシュが続くなど経済の先行きは不透明な状況にあります。また、地震、台風、大雨による自然災害が多発し、気候変動の進展等の地球規模でのリスク環境の変化を痛感させられた一年でもありました。

こうした私たちの安心・安全を脅かす状況の中で損害保険の役割は益々大きくなっています。損害保険業界は迅速・適正な保険金支払を進めるとともに社会変化に対応した新商品・サービスの提供、損害防止・軽減に向けた情報提供等など従来の災害補償を超える新たな価値創造に努めています。


私たち損害保険料率算出機構は、損害保険業界の一員として「参考純率・基準料率の算出」「自然災害リスクモデルの開発」「自賠責保険(共済)の損害調査」「データバンク」の業務を通じて「社会を支えるインフラとして、人々の安心・安全な生活の実現に貢献」することをミッションとしています。

昨年は自然災害の激甚化や大口事故の多発で収支が悪化している火災保険にかかる当機構の参考純率や自然災害リスクモデルの役割に大きな関心が寄せられました。また、ウイズコロナの環境下で公正・迅速・親切な損害調査を着実に遂行するとともに、請求関連書類のペーパーレス化等の業務プロセス改革に向けた取組み等を推し進めました。データバンクの業務では、会員会社に対して当機構のデータやノウハウを活用した各種統計や自然災害リスク評価情報の提供、社会に向けて損害防止・軽減等の有用な情報を積極的に発信して参りました。また、国際交流についても活動を本格的に再開しました。これらを通じて、当機構の役割に対する期待にお応えすることが一定程度できたものと考えております。関係各位のご理解とご協力に改めて感謝申し上げます。


2023年4月、当機構は「Vision2025 ~発展と信頼~」をテーマとする第8次中期経営計画(2023~2025年度)をスタートさせます。新しい中期経営計画は、当機構の役割や現在の環境・ニーズの変化を踏まえ、「損害保険にかかるインフラ機能の強化を通じて持続可能な社会に貢献」という目指す姿の実現に向けて作成しました。

デジタル化の進展、安全性能の高い自動車の普及、少子高齢化・人口減少、気候変動の進行、パンデミック等、当機構を取り巻く環境は、今後もより一層大きく変化していくことが見込まれます。第8次中期経営計画では、さまざまな環境変化への対応を通じて社会へ新たな付加価値を提供する「発展課題」と業務品質の維持・向上への対応を通じて社会からの要請に応え続ける「信頼課題」に分けてそれぞれ取り組みます。

「発展課題」としては、2025年度市場化目途のレベル4の自家用車の自動運転車や新たなモビリティの進展などの交通リスクの変化に対応した料率制度・体系の検討や情報提供に取り組みます。また、自然災害の頻発・激甚化、気候変動の影響に対応したリスク評価や情報提供の拡充を図ります。このほか、社会のデジタル化を踏まえ、車両走行や建物詳細等の新たなデータ収集・活用の検討を進めて参ります。

「信頼課題」については料率算出、損害調査の業務プロセスについてデジタル化等を活用し、より高い品質を最適な方法で実現することを目指します。また、マーケット環境や社会からの要望に対応し、リスク細分化などによる利便性の高い料率制度・体系の改善にも力を入れていく所存です。この他、環境変化に対応した組織作り、グローバルな信頼に応えるため海外活動にも注力して参ります。特に、2023年は、アジア諸国(日本、韓国、タイ、台湾、マレーシア、インド、中国、インドネシア)の料率関連団体をメンバーとして料率算出に関連する情報交換・交流を行うIIRFA(The Insurance Information and Ratemaking Forum of Asia)の10年ぶりの東京開催を予定しております。


本年は卯年であり飛躍・向上の年と言われております。私たちも「環境とニーズの変化に応じて常に改革と創造に挑戦し、社会の期待と信頼に応える唯一無二の存在であり続ける」ことをビジョンに据え、これを体現すべく絶えまぬ努力を続け飛躍して参ります。引き続き変わらぬご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


以 上

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