年頭所感

2019年1月
損害保険料率算出機構
理事長 浦川 道太郎

新年のご挨拶に先立ち、昨年発生した大阪府北部の地震、西日本豪雨、台風第21号や第24号、北海道胆振東部の地震等の災害により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

わが国の経済状況については、各種経済レポートでは世界経済の先行きに不透明感はあるものの、2020年に控える東京オリンピック・パラリンピック関連需要の盛り上がりが期待されていることもあり、景気は緩やかに回復するとの見通しが示されています。また、2025年に開催が決定した大阪・関西万博がもたらすプラスの経済効果も期待されています。

損害保険業界を取り巻く環境に目を向けると、大きな変化が見られます。気候変動に伴う自然災害の激甚化や、少子高齢化の到来等には、その動向を注視して的確な対応をとることが求められます。また、急速に進展するAI等の技術革新に対しては、迅速に対応することでより良いサービスを提供していくことが求められます。当機構では、料率業務、損害調査業務およびデータバンクを通じて、的確・迅速に社会のニーズを満たしてまいります。

当機構では長期ビジョンである「損害保険料率算出機構 今後の10年ビジョン」(以下、「10年ビジョン」)を2013年度からスタートさせました。このビジョンでは、社会環境の変化に柔軟に対応し、「既存業務の基本的構造の見直しと新たな付加価値の創造によって、損害保険業の健全な発達を支え、広く社会から評価される存在を目指す」ことを掲げています。この10年ビジョンの実現に向けて、第5次中期業務計画(2013~2015年度)および第6次中期業務計画(2016~2018年度)を進めてまいりました。2019年度は10年ビジョンの実現に向けた集大成として、第7次中期経営計画(2019~2022年度)を新たにスタートさせる年です。第7次中期経営計画では「改革と創造」をテーマに、次に述べる課題に取り組んでまいります。

1.改革課題

改革課題として、第6次中期業務計画から継続または発展させた課題を完遂することで、現行業務モデルにおけるアドバンテージ(業務成果の強み)の最大化を目指します。

(1)料率業務

リスク実態に見合った料率水準と保険料負担の公平性の向上を実現するため、マーケット環境・リスク環境の変化を踏まえて料率検証・算出手法を改善します。具体的には、ASV(先進安全自動車)技術の普及による料率水準への影響分析、自然災害に関するリスク評価モデルの改善、高齢化の進展を踏まえた料率制度・体系の改善等の課題に取り組みます。

(2)損害調査業務

迅速かつ的確な損害調査を実施し、お客さまや保険会社等の満足度を高めるため、業務品質の向上を図ります。各種ミスの発生防止策の実施等による基本品質の確保・向上やお客さま視点でのサービス向上、蓄積された大量のデータ等を活用することによる不正請求防止対策の実施等の課題に取り組みます。

(3)データバンク

自然災害の激甚化や高齢化の進展も踏まえ、社会全体の事故防止および損害軽減に寄与するため、機構内外のデータを活用した情報発信を強化します。また、関係機関と連携して、アジア諸国の損害保険市場の健全かつ安定的な発展に向けた技術協力を引き続き行います。

2.創造課題

創造課題として、技術革新の急速な進展および地球温暖化の進行等の激変する環境変化に先見性をもって対応するため、10~15年先の中長期的視点から新たな業務モデルの構築を目指します。

(1)技術革新への対応

① 料率業務・データバンク
今後のコネクテッドカー・自動運転車の普及により、M2M(Machine to Machine)通信デバイスやIoTを活用した各種データが生成され、それに基づくリスク分析・自動車保険制度に対するニーズが見込まれることから、データの収集や分析体制の構築とともに、参考純率の商品・料率制度体系上の対応領域・内容の整理や情報発信に取り組みます。

② 損害調査業務
請求関係書類の電子データへの移行が見込まれることから、ペーパーレス化に対応した態勢整備を図ります。また、今後の自動運転車の普及に対応するデータ記録装置の活用等、新たな調査手法の構築による精緻な損害調査業務に向けた取組みを進めます。

(2)地球温暖化への対応

地球温暖化への懸念が高まる中、近未来の気候変動予測および影響評価に関する各種研究が進展していることから、その研究成果を活用した影響分析に取り組み、情報発信を強化します。

3.組織基盤

「改革課題」「創造課題」に取り組むためには、そのもととなる組織基盤の整備・強化が不可欠であり、「働き方改革」「人財確保・育成」「ガバナンス機能の強化」の観点から組織基盤の整備等に取り組みます。


昨年、「損害保険料率算出団体に関する法律」の公布・施行から70周年を迎えました。70年にわたり業務を行ってきた当機構は、現在、日本唯一の料率算出団体として本年もその社会的使命を果たし、ステークホルダーの期待に応えるべく、役職員一丸となって業務に専心してまいりますのでご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。

最後に、皆様にとって本年が実り多い年となることを祈念して年頭のご挨拶といたします。


以 上

第7次中期経営計画はこちらをご覧ください

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